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2021.03.16

のれんが架かるまで

ついぶ京都工房にのれんが架かったところ

ついぶ京都工房の建物は「京町家」と言って、京都の伝統的な家屋をリノベーションした建物です。 ついぶ京都工房としてオープンする前は、漆器の職人さんがいらっしゃったそうです。 内装は畳を外して土足入っていただけ、指輪の手作りがしていただきやすいようにリノベーションしていますが、外観はほとんど手を入れず、 京町家の特徴の一つである格子窓がある深い焦げ茶色の建物をほぼそのままにして使用しています。 入口には工房がわかりやすいように工房の名前が入った青緑色ののれんをかけています。

実はこの入り口にかかっている“のれん”はのれんが架かっているのれんかけの金具までスタッフの手作りなんです。 今回はついぶ京都工房にこののれんが架かるまでを紹介したいと思います。

全体のデザインを考える

のれんのデザインを考える

工房の目印となるような名前の入ったのれんを架けたいということで、まずはのれんのデザインをスタッフが考えました。 工房に入るお客様に目に留まるような、伝統的でレトロな雰囲気だけどどこか新しい雰囲気も感じるような親しみの持てる工房をイメージしたのれんとかけるための金具。 印象的な緑青色ののれんはついぶ京都工房を運営する「東風美術工芸株式会社」の名前に入っている東風をイメージしたカラーです。 「東風[こち]」とは春風を表す言葉で、平安時代など古くから春や東には新しいものを運んでくる風をイメージした青色や緑色を好んで使って表現していたようです。 ついぶ京都工房のホームページのカラーにもそんな新しい風を吹き込むような伝統的な青緑色を取り入れています。 のれんの形はiPhoneなどのスマホで写真を撮っていただきやすいように収まりのいい正方形に近い形にしてみました。 のれんを架ける金具は金古美などと言われるアンティークな色合いが特徴的な五円玉の素材にも使われている「真鍮」という素材を使っていきます。 真鍮という金属は磨くとゴールドカラーに近い輝きを持っているのですが、空気と反応してすぐに変色してしまいやすいという特徴を持っています。 逆にその色の変化は時が流れたような味わい深いものとして、落ち着いた真鍮の色が好きという人も多いかもしれません。 大体のデザインが決まったので寸法や使う素材など細かい調整をして、制作に入っていきます。

のれんを作る

のれんにロゴをシルクスクリーン

京都の布屋さんでイメージに合う生地を買ってきました。 のれんに使われる素材は綿や絹、麻などのリネン生地など季節に合わせて変えていくことも多いようですが、今回は少し変わった蝋引きしたようなパリッとした質感のあるコットン生地にしました。 まずはこののれん生地に工房の名前を入れるシルクスクリーンの版を作っていきます。

版を張る枠を作っているところ シルクスクリーンの版用の枠を作っているよ シルクスクリーンの版用の枠も手作り

シルクスクリーン印刷は印刷したい部分にだけ穴の開いた網戸のような版にインクを載せて、穴の部分を透過したところだけに印刷がされる比較的シンプルな印刷方法です。 版を張るのにちょうどいい枠が無かったので、木枠と版も手作りしました。 少しでもずれたりインクのノリが悪かったりすると、きれいに印刷できないのですが、、、

無事きれいに名前が印刷出来ました! シルクスクリーンでロゴを印刷

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いよいよのれんを縫っていくよ

寸法通りに型紙をカットして、オーナーの奥さんがミシンで縫ってくださいました。 ちょっと硬めの生地だったので縫いにくかったそうですが、布地のピシッとしっかりした雰囲気を残しつつおしゃれなのれんに仕上がりました!

のれん金具を作る

いよいよ金属工芸の工房の腕の見せ所であるのれん金具を作っていきます。

のれん金具のパーツ

写真は図面に合わせて真鍮の板からパーツを切りだしたところです。 実際に指輪づくりに使う金鎚とヤットコという工具のシルエットをモチーフにデザインしたので、指輪の制作の後に見ていただくとより面白いデザインになっていると思います。

真鍮パーツを溶接

切り出したそれぞれの真鍮のパーツを火を使って溶接していきます。 いつも制作している指輪よりも大きいので火も大きなガスバーナーを使用しています。

のれん金具を削る

ヤスリを使ってかたちを整えながらパーツを組み立てています。 パーツをくみ上げたら今後はのれんを実際にかける部分を曲げていきます。 真鍮はシルバーなどの金属に比べて曲げにくい金属なので、 のれん金具をなます のれん金具のフックを作る 火をあてて柔らかくしては曲げて、また火をあてて…と繰り返して のれんが架かるフックの部分を成形します。 風が強い日に飛んでいかないかつ取り外しがし易いように左右非対称にフックを作りました。 既製品ではしにくいちょっとした形をこだわって使いやすくできるのが手作りの良さですよね!

全部組みあがったのれん金具を取り付けてのれんを架ければ完成です。 のれん金具の錺・ハンマー のれん金具の錺・ヤットコ

のれんはついぶ京都工房の営業に合わせて架けてあるので、工房に来店される際に目印すると工房を見つけられます。 ぜひ体験終わりに金具もご覧になってくださいね。

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ついぶ工房にはDIYが得意なスタッフがいて、東京工房や川越工房、名古屋などの各工房の内装やフォトアイテムはスタッフの手作りで用意していることが多くあります。 指輪づくりだけでなく内装の雰囲気やフォトアイテムを使った写真撮影などしていただいて、皆様の楽しかった思い出として残ればうれしいです。